CreATIVES
エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター
ボイスアーティスト / クリエイティブ・ディレクター
ミキシング・エンジニア
プロダクション・アシスタント
フラビオ・イッバ
音楽監督
サミ・タンメラ
サウンド・デザイナー

Fiat 500e

電気自動車(EV)は静粛性が高いことで知られているが、Fiat 500eは音で周囲に存在を示す。街中でEVを見かけることも多くなったが、Fiatの新型EV「500e」は、歩行者に接近していることを音で知らせる安全性を確保しながらも、聞いていて快適なエンジン音が特徴となっている。ヨーロッパ連合(EU)では、電動車両にAVAS(車両接近通報装置)の装着が法的に義務付けられており、時速20km/h以下の走行時にエンジン音が流れることが必須となっている。このプロジェクトにおけるクリエイティブ面での課題は、技術的なガイドラインを遵守しながらも、500eの車両と同じくらい個性のあるサウンドを生み出すことだった。Fiatの「チクエチェント」は、イタリアの自動車技術のアイコンでありながら、そのチャーミングでおしゃれなデザインはイタリアのポップ・カルチャーの中でも確固たるポジションを確立している。Fiatの歴史に敬意を表しながらも、未来への進化を予感させる500eのサウンドデザインに挑戦することがこのプロジェクトのミッションとなった。 日本のチーム、ヘルシンキを拠点に活動するボイスアーティスト、ミラノの音楽エージェンシーがコラボレーションをすることで、人間の声を最大限に生かしたエンジン音を作り上げた。サウンドデザインの制作プロセスにおいて、車両の加速に伴って音のピッチを変える方法を見つけることが課題となったが、なるべくなめらかでメロディアスな音にするために、自動ピッチシフト機能を使用。人間の声と、イタリアの偉大な映画音楽作曲家であるニーノ・ロータ(『ゴッドファーザー』、『道』、『ロミオとジュリエット』)へのオマージュを込めた音楽トラックを融合させることで、革新的でありながらも有機的なサウンドにたどり着いた。また、日本の「わび・さび」の根底にある「不完全の中に息づく美しさ」という思想にインスパイアされた制作チームは、人間の声が持つ暖かみを生かしたエンジン音をクリエイトすることで、アーバンな環境に新たな息吹を吹き込むことに成功した。

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