十和田湖 春

2024年6月14日

「日本には四季という文化があって、季節に敬意を表しますよね。
紅葉を見に出かけたり、色彩の変化や季節の食べ物を楽しんだり。
私自身も、日本にある五つの季節にインスパイアされました」
ニック・ウッド

春は新しい始まりの季節とされています。
世界でも冬が過ぎて春になると、楽観的になったり気持ちを改めて、お祭りや伝統行事が開かれます。日本ではこれが顕著で、春は一年の中でも重要な季節。4月には日本の至る所で桜が咲き誇り、新しい年度や学期が始まるだけでなく、個々にとっても節目となる時期でもあります。

日本の国土は南の沖縄から北の北海道まで非常に長いことから、春の到来は地域によって異なり、桜は3月下旬から5月上旬にかけて北上します。春が北端の北海道へと向かう通過点途中の、北日本の秋田県と青森県の県境に十和田湖があります。

十和田湖は、約20万年前に形成された十和田八幡平国立公園内に位置する
カルデラ湖です。ブナ、ナラ、カエデ、カツラや杉など様々な樹木に囲まれており(なかには樹齢200〜300年以上の木で、NY州より古い樹木もある)、
この湖畔にSynにとって十和田湖の季節のコレクションの原点となるウッドのスタジオがあります。Syn東京のスタジオが東京の中心地である原宿にあるのとは対照的に、十和田湖は静けさに包まれた自分と向き合える場所と言えます。ウッドはこのプロジェクトについて話します。「このコレクションは、十和田湖で過ごした時間と十和田八幡平国立公園の美しい自然に触れた経験から生まれました。ここに何年も通って、すべての季節を体験したけれど、それぞれの季節によって全く違ってさまざま。そこで、この季節にインスパイアされた音楽を作るという美しいプロジェクトを思いつきました。季節は変化をもたらします。例えば、食べ物。”この果物は今の季節でしか食べられないよ”と言って季節の料理を楽しんだりもしますよね」「十和田湖 春」は再生と新たな始まりを表現し、北日本の環境にあるスピリットを持ち合わせています。十和田湖スタジオは、冬は徒歩かスノーモービルでのみアクセス可能な場所にあります。「ここの冬は本当に長い。杉の木以外の緑は落葉し、雪が背丈まで積もるほどの厳しい寒さが4月まで続きます。だから他の地域と比べて春が遅く訪れますが、その時は力強くて活気に満ちています。春は北日本の人々にとって救いとなる季節。冬がついに終わった。というね」

春を表現したこの作曲プロセスについてご紹介します。
十和田湖の自然環境を表現するために、ウッドは現地で集音した環境音を含め、PlantWaveテクノロジーを使用して植物が生み出す音も録音しました。
PlantWaveテクノロジーとは、ポケットサイズのデバイスを用いて、植物の微小な電気信号をMIDI(Musical Instrument Digital Interface)に変換することにより楽譜が出来上がります。歌を作ったり、映画音楽を作曲するプロセスとは異なり、ウッドの十和田湖へのアプローチは、“春を音楽的にどう表現するか”という彼の挑戦でもありました。「私はポップミュージックとともに育ち、曲を書いてきたし、もちろん映画音楽を作曲したりしてきましたが、このプロジェクトは映像のために書くのではなく、人々と自分自身に喜びとポジティブな思考をもたらすために書くことでした。それで、十和田湖というこの美しい場所の自然と音にインスパイアされた音楽のコレクションを思いついたんです。このプロジェクトは、作詞家そして作曲家の私にとって新たな挑戦であり、私のやりたいことでやるべきことでもあったんです。”十和田湖ってどんなところ?”と、日本人にも海外の人にも興味を持ってもらいたいですね」

「十和田湖コレクション」では、伝統的な“四季”の概念に加えて第五の季節である“雨季”にもご注目ください。日本の梅雨は、6月中旬から7月中旬までの間、毎日雨を降らせ(そして時には洪水も)日本の島々を潤わせます。この特有の季節はウッドにとっても重要でした。最も有名な例えだとアントニオ・ヴィヴァルディ「四季」がありますが、それをユニークな日本的なものにしたものです。<br>「毎年、梅雨が始まるとアナウンスされるのに、なぜ ”四季” と呼ぶのか分かりません。間違いなく ”梅雨” という第五の季節があります。雨の音がすごく好き。夏が冬のように感じることもある故郷のイギリスとは違って、日本の季節はとても明確でかつ文化的で感心します」

Synは長きにわたってDolby Atmosでオーディオをミキシングしています。
「十和田湖 春」では、Synはロサンゼルスを拠点とするミックスエンジニアの
デビッド・レビンと共に作業しました。デビッドは過去2年間、Dolby Atmosで
ミキシングを行っており、この最新プロジェクトでは9.1.6のATC Atmosルームで作業しています。
デビッドはAtmosについて話します。「パーティーで人々を見るのと、実際にパーティーの中にいることとの違いのように、音楽の中にいるように感じることができるんだ」デビッドは、このフォーマットがウェルネスやリラクゼーションにインスパイアされたプロジェクトに特に効果的だと説明します。
「目標は、リスナーの気を散らさないこと。動きのある音で注意を引くのではなく、リスナーがリラックスできる空間を作り出すことです」

私がニックと話す間に、彼は東京から十和田湖に戻って「梅雨」という十和田湖コレクションの次の作品の作業を続けます。
「十和田湖 春」をリスナーはどのように楽しむべきか尋ねると“セルフケアのように”と答え、またこう言いました。
「この曲は、リスナー自身のパーソナルな時間に捧げられるようデザインされています。自分と向き合って、自分自身の存在に気づく時間。自然の大切さや日本特有の季節を感じて、音のバリアによって周囲の騒音からエスケープできるような…電車で聴いて、都会の騒音を遮断するような。これがソニックバブルなんだ」

それでは、ソニックバブルに包み込まれる体験をお楽しみください。

「十和田湖 春」は、Apple MusicのDolby Atmosで視聴でき、
そしてSynからライセンスもできます。