十和田湖 秋

2024年11月22日

「学生の頃から、収穫について話すことがよくありました。夏の終わりに訪れる豊かな恵み、例えばジャガイモやカボチャ、果物、そして日本ではお米。秋は、冬に備えて作物を収穫する実りある季節です。それを音楽やサウンド、そして楽器を通して表現したいと思いました。」
多くの人にとって、秋といえばカサカサと舞う落ち葉や、木々の枝が露わになって冷え込む季節をイメージすると思います。でも、見逃されがちな秋のもう一つの側面、それは豊穣の秋。夏の日差しが緑を育むように、秋はその成果を収穫する時期です。何千年もの間、収穫は儀式や伝統、そして音楽を通じて祝われてきました。例えば、ケルトの祝祭「サウィン(Samhain)」は収穫の終わりと暗い季節の始まりを祝うもので、後に「死者の日(All Souls Day)」、そして「ハロウィン」へと発展しました。
アングロ・ヨーロッパの古代の収穫祭の伝統は日本からは遠いものに感じるかもしれませんが、実は多くの共通の感覚が日本文化にもあります。例えば、十和田湖の秋は多くの観光客で賑わう季節で、湖周辺では色鮮やかな紅葉が地域一帯を自然のパッチワークのように彩ります。日本の秋は稲の収穫時期でもあり、田んぼが黄金色に染まり、全国各地で収穫を祝う行事が行われます。十和田湖畔のスタジオ、つまりは十和田湖シリーズの発祥地から、ニック・ウッドはこの季節について次のように語ります。「『十和田湖 秋』は、10月中旬から下旬にかけて十和田で起こる壮大な季節にインスパイアされました。本当に壮観で鮮やかで、この地域全体が黄色や深紅、茶色に染まり、その色彩はとても鮮明で生き生きとした風景。この季節は観光のピークでもあり、多くの釣り人が十和田湖に訪れて姫鱒という珍魚の釣りを楽しみます。美しい魚で、味は内陸のサーモンのようなもので、養殖ではなく天然。釣るのはすごく難しいんです。」

『十和田湖 秋』は音楽とサウンドを通じてこの季節を祝福し、探求しています。五つの季節からなるコレクションのこの最新章でウッドは、和楽器を用いて日本的な作品を作曲しました。イギリスと日本の収穫に対する関係や、その両文化にまたがる自身の経験が、本作に日本的な音楽要素を取り入れるインスピレーションになったのかもしれません。ウッドは話します。「この季節の非常に鮮明な色彩色とその力強さを音楽で反映したくて、作品に日本的な要素を取り入れました。他の季節とは異なり、琴や笙などをサウンドパレットに加えました。笙は古代の雅楽器で、ハーモニウムや教会のオルガンのような音色がします。演奏するのが非常に難しい楽器で奏者も少ないのですが、東京で素晴らしい女性奏者に出会うことができました。」
笙は東田はる奈、琴は吉羽美帆が参加し、ギターはショーン・ハリー、ピアノはアレクサンドル・モトヴィロフが引き続き担当しています。また、『十和田湖 秋』ではボーカルも重要な役割を果たしています。ウッドの長年のコラボレーターである上野洋子の独特な息遣いのボーカルは、作品にテクスチャーとハーモニーを加えています。彼女はウッドと30年以上にわたりコラボレーションを続けており、楽器のような役割を果たす彼女のボーカルについて、ウッドは説明します。「洋子さんは素晴らしいハーモニーで、息遣いを感じさせるボーカルが得意です。彼女のブレスのように聞かせるボーカルが、風の感覚を音楽的に表現するのにぴったりでした。これが『十和田湖 秋』の基本的な要素だと思います。和楽器と洋子さんのボーカル、そして声で風の感覚を表現することが。」ボーカルが季節を表現するエレメンタルな要素に—。これは、十和田湖シリーズの一貫したテーマなのです。

この「風」の概念は『十和田湖 秋』にとって重要な要素であり、八幡平の森を通り抜ける風そのものが一種の楽器のように存在感を放ちます。ウッドとSynのチームは、スタジオのすぐ外で録音した風の音をフィールドレコーディング(屋外録音)しました。また、湖面に打ち寄せる水の音も収録されており、秋になると湖岸は静けさと波立つ荒々しさの両方を見せる十和田湖そのものの個性を捉えています。さらに、日本の秋の夜に聞こえる虫たちの声、特に十和田では鈴虫やコオロギの鳴き声がパーカッシブに響き、十和田湖の自然に敬意を表しています。東京へ戻る準備をする間も、ウッドは南へ渡る白鳥やガチョウの鳴き声をiPhoneで録音し、季節の巡りを音楽に反映しました。
『十和田湖 秋』には、僧侶の読経も含まれています。京都の両足院の副住職・伊藤東凌が読経を担当。ウッドが彼と『十和田湖 秋』の作曲期間中に京都で時間を共に過ごしたことで、十和田湖シリーズの物語の一部が作られました。ウッドが「収穫や稲にまつわるお経はありますか?」と尋ねると「いえ、でも秋の満月についての美しいお経ならありますよ」と答えました。これがウッドの心に響き、作品に催眠的で循環的な要素となりました。この読経は『十和田湖 秋』に空を見上げるという新たな次元を与え、収穫の満月をこの音楽物語に含めるきっかけとなりました。

十和田湖シリーズの第4章で、ニック・ウッドがどのように新しい領域を探求し続けているかを感じていただけましたでしょうか?映像に合わせて音楽を作曲する「音楽と映像」の業界にいるウッドにとって、このシリーズは自由に作曲するという新たな経験となりました。CMの30秒、60秒、90秒といった形式に囚われることのないこのシリーズについて、ウッドはこう話します。「このプロジェクトで多くのことを学びました。15秒や30秒、2分間の映画音楽に取り組む世界から抜け出すのはかなり挑戦的でした。自由すぎて16小節を繰り返し過ぎたかなと思ったけど、実際には100小節も必要で。この30年間取り組んできた自分の経験やスキルにおける枠組みや境界を打ち破る、良い経験になりました。」

11月9日、『十和田湖 秋』はロサンゼルスでデビッド・レヴィンによってDolby Atmosミックスされ、全世界配信となりました。十和田湖シリーズも残るはあと1章。1年を振り返るように、全ての季節を通してお楽しみいただくその日までは『十和田湖 秋』を聴きながら、この言葉を思い出してください。「秋は、手放すことの美しさを教えてくれる」