Amazon「お正月」制作秘話

2023年1月19日

日本のお正月は新年の始まりを祝う3日間の祝日。家族が集い、祝福してこれから始まる年に期待を膨らませる。2020年末に展開したアマゾン・ホリデーキャンペーンでは、このような情景を音楽とサウンドデザインで表現した。

兵庫県尼崎市はF1の小林可夢偉の出身地であり、またアジア最大級の物流倉庫「ESR尼崎」があることでも知られている。このアマゾンキャンペーン用の遊び心と魅力にあふれた音作りの旅は、東京から西のESR尼崎に向かう新幹線の中から始まった。このキャンペーンでは、アマゾンのダンボール箱がキャラクター化され、アニメーションで表現されている。Synは、この映像に最適の音楽を制作する上で、ダンボール箱自体を使って音楽やサウンドデザインを作り出すことを着想。

子どもと暮らす人なら分かるかと思うが、(あるいは自身の幼少期のことを思い出していただければ)、鍋やフライパン、ワイングラスなどほとんどのものを打楽器にすることができる。そこで、Synのプロデューサー兼パーカッショニストの芳賀一之が様々なマレットやスティックで、サイズ違いの箱数種類を叩き、楽曲に命を吹き込む音ネタを録音。選曲は入念に行い、瀧廉太郎作曲の「お正月」を編曲することに決定。「お正月」は「お正月まであと何回寝られるかな」という歌詞で年末に歌われる童謡。この曲は日本の視聴者に、家族観、郷愁、また幼少期を連想させる。

Synは多くのネイティブスピーカーでバイリンガルのタレントと繋がっているが、今回のキャンペーンではそんなLA在住のバイリンガルボーカリストの1人がゴスペルアレンジを施し、自らボーカルも担当した。他の4人のリードシンガーによるコーラスとともに、アマゾンボックスを演じて魔法のようなアンサンブルを作り上げた。

その中には「アマゾンボックスファミリー」の中で一番小さい箱の役を担当した7歳リンちゃんの可愛らしい歌声も収められている。様々なスタイル、性別、年齢からなる声のアンサンブルを用いることで、私たちは新年のお祝い気分にぴったりな家族観を演出。

Synの面々は尼崎から東京に戻ると、お正月の風景や箱のキャラクターに使用されるサウンドデザインを制作。酒瓶、ガムテープ、アマゾンボックスから出る様々な音を録音し、映像内のシーンにダイナミックさを加えた。そして長年Synのパートナーであり、サウンドデザイナー、さらにボイスアーティストとしても活躍するルディ・ロックが、フィンランドのヘルシンキでキャラクターの音声を録音。ブレスや笑い声などでキャラクターに命を吹き込んだ。また、SynのCEO/クリエイティブ・ディクターのニック・ウッドも口笛で参加。敢えてフルートを使用しないことで、親近感と喜びに満ちたこの新年の映像に花を添えた。

このキャンペーンの音楽とサウンドデザインは「新旧」、「過去と未来」、「伝統と現代」を融合させたもの。日本人なら誰もが知る伝統的なイメージが核となっているため、Synは音楽も同様にリアルな日本らしさを、新鮮な形で体現するよう努めた。アマゾンボックスそのものの音と馴染みのある童謡を使用することで、アニメーションの音風景に温かみと親しみやすさをもたらし、視聴者がこの映像の世界観により共感が持てる作品へと昇華させた。

Synのアマゾン向けキャンペーンは、AVA賞で金賞、ADFESTで銅賞を受賞し、アニメーションのパートナーであるOnesalは2つの賞(銀賞と銅賞)を受賞した。